多田麻美 著
四六判上製 320頁
定価:2,310円(本体2,100円)
978-4-7949-6937-8 C0030〔2016年10月〕
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スクリーンに映る、
わたしたちの隣国の〈現在〉
激動の現代史を経てきた中国。いまだ社会にひそむ文革の傷跡、開放政策のもたらした格差にあえぐ人々、そして医療訴訟や薬物問題、農村の現実、家族の絆など現代社会の諸問題まで、映画は細部を映し出す。現地に住み、リアルタイムで中国映画を追いかけてきた著者ならではのエッセイ。
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【目次】
1部 歴史をたどる
1、現代史の荒波の中で
困難な時代を生き抜く――『一九四二』『芙蓉鎮』『活きる』
歴史の伝承者――『戦場のレクイエム』
戦火の中の日本人像――『北京の恋―四郎探母』『南京!南京!』『呉清源~極みの棋譜』
誰が英雄で、誰が卑怯者か――『金陵十三釵』『鬼が来た!』
残留孤児への視線――『乳泉村の子』『親愛』
侵略戦争下の倒錯した愛――『レッドダスト』『ラスト、コーション』
魔都の記憶をひもとく――『海上伝奇』『上海紀事』『上海ルンバ』
2、天災と人災を描く
大震災の後を生きる――『唐山大地震』『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』
階級闘争の後遺症――『闖入者』
世界の映画と対話する――『我11』『ヤンヤン 夏の想い出』
翻弄される家族のヒストリー――『美麗上海』『再会の食卓』
蘇る文革的ラブストーリー――『サンザシの樹の下で』『妻への家路』
親子の確執を描く――『胡同のひまわり』『藍色骨頭』
革命時代の子供たち――『太陽の少年』『小さな赤い花』
3、改革開放の「その後」
お正月映画の元祖――『夢の請負人』
時代に乗り遅れた者たち――『孔雀 我が家の風景』『蛋炒飯』
忘れられた記憶をたどる――『長江哀歌』『四川のうた』『鋼のピアノ』
ドタバタの裏のカタルシス――『クレイジー・ストーン~翡翠狂騒曲~』
メディアとしての映画――『我が道を語る』
検閲とのせめぎ合い――『罪の手ざわり』
社会と人が負った「ひずみ」――『山河ノスタルジア』『天上人』
4、対置される地方と都市
出稼ぎ労働者たちと故郷――『ドリアン・ドリアン』『遠い帰郷』
アウトローたちの活劇――『無人区』『ミッシング・ガン』『さらば復讐の狼たちよ』『ココシリ』
格差の中の青春――『北京の自転車』『青紅』
夢の残影――『最後の夢想家たち』『北京バスターズ』『長大成人』『冬春的日子』『ルアンの歌』『立春』
道なき道を行くロードムービー――『いつか、また』
音楽に夢をかける――『我就是我』『百鳥朝鳳』
2部 現代中国の諸相
1、社会の暗部をえぐる
医薬業界の腐敗を暴く――『我是植物人』『判我有罪』
人身売買がもたらす悲劇の連鎖――『小蛾の行方』『盲山』『最愛の子』
法の公正さを問う――『再生の朝に ある裁判官の選択』『全民目撃』『十二公民』
炭鉱の深い闇――『盲井』『米香』
2、現代人の孤独
蝕まれる薬物中毒者たち――『昨天』
サスペンスタッチで迫る人物像――『薄氷の殺人』『風水』『二重生活』『ふたりの人魚』
つながりへの渇望――『ションヤンの酒家』『たまゆらの女』『重慶ブルース』
一人っ子世代の恋愛模様――『スパイシー・ラブスープ』『ウォ・アイ・ニー』『恋する地下鉄』
3、農村の現実を描く
限界に抗う村人たち――『古井戸』『消失的村荘』『ようこそ、羊さま。』
エイズ被害の現場――『在一起』『最愛』
置き去りにされた子供たち――『卵と石』『帰途列車』
罪を暴くリアリズム――『血祭りの朝』『殺生』
4、多様化する家族のかたち
切っても切れない親子の縁――『ただいま』『胡同愛歌』『上海家族』『私とパパ』『老炮児』
イレギュラーな家族関係――『租期』『安陽の赤ちゃん』『我らが愛にゆれる時』
浮気の代償――『趙先生』『一声嘆息』『手機』『重来』
5、日常の細やかな描写
高齢者たちのサークル――『北京好日』『こころの湯』『グォさんの仮装大賞』
老いゆく人々の時間――『胡同の理髪師』『私たち』『老那』
理不尽な社会を生きる――『スケッチ・オブ・Peking』『わが家の犬は世界一』『A面B面』
軽やかで、したたかなラブコメ――『狙った恋の落とし方。』『狙った恋の落とし方。2』
6、つながる世界と人、または表現の地平線
マイノリティへのまなざし――『インペリアル・パレス』『ブラインド・マッサージ』
海外という「仮想ワールド」――『二弟』『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』『世界』
見られる側としての中国――『ハッピーフューネラル』『無窮動』
誘拐された香港スター――『イノセントワールド―天下無賊―』『解救吾先生』
合作でつながる人と場所――『呉清原~極みの棋譜~』『北京遇上西雅図』
1973年に大分県で生まれ、静岡県で育つ。京都大学卒業。京都大学大学院中国語学中国文学科博士前期課程を修了。2000年より北京在住。北京外国語大学ロシア語学院にて2年間留学後、北京のコミュニティ誌の編集者を経て、フリーランスのライター兼翻訳者に。おもなテーマは北京の文化と現代アート。著書に『老北京の胡同――開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』(晶文社、2015年)がある。訳書に『北京再造――古都の命運と建築家梁思成』(王軍著、集広舎、2008年)、『乾隆帝の幻玉』(劉一達著、中央公論新社、2010年)、共著に『北京探訪』(東洋文化研究会、愛育社、2009年)、共訳に『毛沢東 大躍進秘録』(楊継縄著、文藝春秋、2012年)、『9人の隣人たちの声』(勉誠出版、2012年)など。
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