――恐ろしくも驚異的な手術の歴史
アーノルド・ファン・デ・ラール著
福井久美子 訳 鈴木晃仁 監修
四六判並製 404頁
定価:2,420円(本体2,200円)
978-4-7949-7344-3 C0022〔2022年12月〕
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痛すぎて笑うしかない
スプラッターな試行錯誤
現代に生まれて、ほんとうによかった――
麻酔はない、消毒もない、手洗いすらない時代。
外科医たちは白衣ではなく、返り血を浴びても目立たないよう黒衣を着ていた。
傷口は水で洗うかわりに焼きごてで焼灼(しょうしゃく)。
出血多量のときこそ瀉血(しゃけつ)。
患者はベッドに押さえつけられ阿鼻叫喚の手術がおこなわれたが、
そこには治療の道を切り開こうと必死に手探りしていた人たちがいた。
驚愕と震撼とユーモアに満ちた、背筋も凍るほど刺激的な一書。
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【目次】
序章 「手」で治す外科医たち
第1章 ある鍛冶屋の男
膀胱を自分で切り裂き摘出――結石
第2章 アブラハムとルイ16世
ペニスを石でしごいて包皮を切りとる――包茎
第3章 エリザベート皇后
心臓を刺されても歩き回れたのはなぜか――血液循環
第4章 インノケンティウス8世・レオ10世・ヨハネ23世
教皇も逃れられない暴食――肥満
第5章 ヨハネ・パウロ2世
人気教皇、銃撃され腸が穴だらけ――人工肛門(ストーマ)
第6章 ペルシア帝国ダレイオス王
「手術で死んだら、外科医の手を切り落とす」――脱臼
第7章 ジョン・F・ケネディ
世界が見つめる世紀の大解剖――気管
第8章 リー・ハーヴェイ・オズワルド
ケネディと同じ外科医が暗殺者も――手術の限界
第9章 アウストラロピテクス・アファレンシスのルーシー
二足歩行とひきかえに――静脈瘤
第10章 奇術師フーディーニ
水拷問よりも腹パンチよりも――虫垂炎
第11章 ヴィクトリア女王
無痛分娩、歴史が動くとき――麻酔
第12章 大航海時代の貿易商ストイフェサント
砲弾で砕かれた脚はどうなるのか――壊疽(えそ)
第13章 名探偵ポアロとシャーロック・ホームズ
外科医は金星人、内科医は火星人――診断
第14章 イランの元皇帝
1.5リットルの膿を腹に抱えた亡命生活――合併症
第15章 バロック音楽家リュリとボブ・マーリー
足指切断のかわりに失ったもの――播種(はしゅ)
第16章 ローマ帝国執政官
丸々と肥えた軍人には脂肪切除を――開腹手術
第17章 アインシュタイン
天才の血管は破裂寸前――動脈瘤
第18章 内視法の生みの親たち
腹を切り裂くか、鏡を突っ込むか――腹腔鏡手術
第19章 アダム・宦官・カストラート
ペニスを切り落とす10の方法――去勢
第20章 英国王ジョージ6世
イギリス王室とタバコの関係――肺がん
第21章 宇宙飛行士アラン・シェパード
究極のプラセボ治療――瀉血(しゃけつ)
第22章 英国キャロライン王妃
でべそを隠した王妃の壮絶な最期――臍ヘルニア
第23章 イタリア戦争を生き延びた若き医師
自分の傷に指を突っ込み腹腔を学ぶ――鼠径ヘルニア
第24章 19世紀フランスのパン屋
歯科医がつくった機械の肩を埋め込まれた男――人工関節
第25章 レーニン
頭痛、不眠、ノイローゼの指導者――脳卒中
第26章 胃腸をはじめてつなぎ合わせた外科医
ちょっと雑でも高速技なら大丈夫――胃切除
第27章 ルイ14世
とがった器具をさし込み一気に引き抜く――痔
第28章 動物園の獣医
デンキウナギに麻酔をかける――動物の手術
1969年、オランダ生まれ。オランダの総合病院で働く外科医。生物学の授業で人体の仕組みに魅了され、ルーヴェン・カトリック大学で医学を学ぶ。ヒマラヤ、チベット、アフリカなどを旅した後、カリブ海のセント・マーチン島で外科医のキャリアをスタートさせる。
翻訳家。グラスゴー大学大学院英文学専攻修士課程修了。訳書に『世にも危険な医療の世界史』(文藝春秋)、『フューチャー・バック思考』(実務教育出版)など多数。
東京大学大学院人文社会系研究科死生学教授。専門は医学史。共訳書に『医学の歴史』(丸善)など。