アナベル・ウィリアムズ 著 田中恵理香 訳
四六判並製 352頁
定価:2,860円(本体2,600円)
978-4-7949-7423-5 C0036〔2024年5月〕
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現在のペースだと男女間の賃金格差を解消するためには257年かかる――。
257年待っていられないすべての人へ。
お金×ジェンダーの必読書。
もし、自分が一生、男性よりも収入が少ないと知っていたら?
今日、女性であることはそうなる可能性が高いことを意味し、男女の間にはいまだに大きな格差が存在している。「女性の賃金を低くするのは違法だから賃金差別は存在しない」「賃金格差は教育で解決できる」などの通説を覆しながら、格差が生まれる根本と平等に向けた具体策に迫る。
【本書で言及される格差の一部】
●女性の労働収入の総額が男性と同じになっている国はない
●女性は男性と同じくらい頻繁に昇給を求めるが、認められる確率は25%低い
●女性は家を購入する際、平均して男性より2パーセント高い金額を払っている
●女性は車の修理に男性より数百ポンドも高い料金をふっかけられる
●アメリカでは、国内上位1500社のなかで、ジョンという名のCEOが、女性のCEOより多い
●1888年、イライザ・オームはイングランドの女性として初めて法律の学位を授与されたが、事務弁護士として働くことを法的に認められるまで31年待たなければならなかった
●イギリスで最初の女性医師となったマーガレット・アン・バルクリーは男装して医学を学び医師となり、亡くなるまで男装していた
●ハーバード大学医学部は女子トイレが無いことを理由に女子学生の入学を1945年まで認めなかった
●アメリカの下院では2011年になるまで議場の近くに女性用トイレがなかった
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【目次】
はじめに 経済力はフェミニストの課題
第1章 私たちのいまの状況
イギリスで起訴された女性の中で一番多い違反は?/貧困の女性化 /女性の隠れた貧困/同性カップル、LGBTQ+の貧困 /ジェンダー視点の年次報告書を /女性CEOの報酬 /富裕層はより豊かに /第四波フェミニズム /ネオリベラル・フェミニズム /ネオリベラル・フェミニズムの問題点 /チョイス・フェミニズム
第2章 これまでの道のり
女性が銀行から締め出されていたころ/財産としての女性/未婚女性への偏見/アイルランドのある事例/道を切り拓こうとした女性たち /夫の姓になることを拒否した女性/労働の権利と女性にふさわしくない仕事/結婚という障壁(マリッジ・バー)/女性は弁護士になれない/長年女性に学位を授与しなかったオックスフォードとケンブリッジ /生涯男装した女性医師/女性用トイレがない/妊娠したら解雇される
第3章 お金に関する思い込み
女性は浪費家なのか?/通説その1――女性はリスクを嫌う/通説その2――女性はビジネスの才能がない/通説その3――女性はすぐれた起業家になれない/紹介される専門家の多くが男性
第4章 老後貧困という重大問題
老後の資金格差/女性は年金積み立てが難しい/収入が足りず年金に加入できない/会社から離れると不利になる年金制度/煩雑な申請制度/拠出金による制度は不平等である/拠出金によらない市民年金/国家年金の不平等に反対する女性と未亡人/複雑な年金貯蓄制度 /年金の解説
第5章 男性が主流の経済学
著名な経済学者はほぼ男性/女性経済学者が必要な理由 /男性主流(メイル・ストリーム)/数字で表せない経済活動/GDPが見落とすもの/育児関連の支出をインフラに
第6章 政府がジェンダーを考慮しない
保険適用されにくい女性特有の疾患/緊縮財政の影響を受けるのは女性/ユニバーサル・クレジットの問題点/世界各国のジェンダー予算事情
第7章 日々の生活費が少しずつ高い
「ピンク税」の存在/女性向け製品はニーズを反映しているのか?/車の費用をふっかけられる/「生理の貧困」と「生理の平等化」/生理用品は医療上必要ではない?/月経税/生理用品にかかる税の引き下げの実現
第8章 「女性の問題」
トイレを使う時間を制限する/生理をめぐる政策/「デュベの日」の提案/更年期休暇の必要性/更年期への対応の必要性
第9章 ジェンダーに基づく住宅危機
安全な住居と女性/不動産価格の値上がり/独身女性が不動産を持つ難しさ/買うときは高く、売るときは安くされる/妊娠したら退去されられた例/DSSはお断り/家賃の値上げと住宅給付金/経済的虐待/シェルターの増設、住宅支援を
第10章 ただ働きのケアワーカー
マザー・ペナルティ/保育サービス/ジェンダーと家事/同性カップルの家事負担/パートタイム労働者に対する差別/世界各国の育児休暇/介護によるキャリアの中断/離婚による財産分与/法的支援の格差/弁護士費用が払えない/同居カップルの権利/婚前契約/子どもの養育費
第11章 リプロダクティブ・ライツ
女性の自己決定権/避妊に保険が適用されない/中絶の権利を阻害する動き/どんな状況でも中絶を禁止するアラバマ州/国際的に見たリプロダクティブ・ライツ/避妊の「責任の女性化」/妊産婦死亡率の人種格差
第12章 賃金格差
女性の賃金は男性より低い/通説その1――女性の賃金を低くするのは違法だから賃金差別は存在しない/通説その2――男性労働者のほうがすぐれている/通説その3――賃金格差は教育で解決できる/通説その4――女性は育児のせいで仕事に集中できない/通説その5――女性はすぐれたリーダーになれない/能力に対する偏見と賃金格差/インポスター症候群/賃金格差の是正を/解決策その1――とにかく平等な賃金を支払う/解決策その2――前職の賃金の開示を求めない/解決策その3――給料を秘密にしない/解決策その4――賃金差別に対する罰則/解決策その5――人事部門の責任の拡大/解決策その6――積極的に女性の声を取り入れる
第13章 美の基準と社会の期待
ミソジニーがはびこる政界/「強烈な性差別」が後に与える影響力/美への投資/ソーシャルメディアの理想像 /規範に従わないときのペナルティ/体のサイズと給料/ジェンダーニュートラルな子ども時代
第14章 セルフケアとしてのお金
金融レジリエンス/基盤としてのお金/ゼロから1万へ/生活管理のための時間をつくる/自分の純資産を調べる/収入の配分/適切なアクションをとる/自分のことを優先的に考える/共同口座のパスワードを知っておく/社会の圧力について考える
第15章 投資について語ろう
投資は男性のものではない/投資とは何か?/何が投資をおもしろくするか/通説その1――投資はギャンブル/通説その2――投資するには金持ちでなければならない/通説その3――投資するのは冒険好きで尊大で貪欲な人/通説その4――株式市場はかならず暴落し、全財産を失う/なぜ投資が重要なのか/投資を始めるべきか/実際にどう投資を始めるか?/女性には投資ファンドがいい/グローバルな投資/リサーチをする /どのように投資先を選ぶのか?
おわりに
謝辞
原注
投資、経済、消費者問題を専門とするジャーナリスト、編集者。タイムズ紙でコラムニストとして活躍したのち、テレビ、ラジオ、パネルディスカッションに出演するなど、さまざまな活動を通して男女間の金融格差に対する事実を広めている。本書が初の著作。
東京外国語大学英米語学科卒、ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士課程修了。訳書にフィッツハリス『ヴィクトリア朝 医療の歴史』(2021年、原書房)、フィリップス『巨大企業17社とグローバル・パワー・エリート』(2020年、パンローリング)、ルイス『むずかしい女性が変えてきた』(2022年、みすず書房)などがある。