春を売るひと

――「からゆきさん」から現代まで

牧野宏美 著
四六判上製 228頁
定価:2,200円(本体2,000円)
978-4-7949-7425-9  C0036〔2024年6月〕


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しかたないでしょ、生きるために

島原半島からの密航。米軍基地の脇で、そして現代の夜の新宿で。彼女たちは何を思い、どう生きて来たのか。「からゆきさん」「パンパン」ー 娼婦、売春。最後の証言者たちの声を追い、120年にわたるその真実の姿と命に迫る。共感を呼ぶまったく新しい女性史の誕生。

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【目次】

はじめに

第1章 からゆきさんの声

「声」との出合い/「からゆきさん」/汚物で身を守る/ムシロをかぶって上陸/「忙しかときは痛かとですよ」/「日本人客は好かん」/中絶と不妊手術を迫られる/別れと帰国/「醜業婦」と呼ばれて/夜を徹してのインタビュー/からゆきさんの墓へ/春代のからゆきさんとしての半生/帰って来たからゆきさん/「島原の子守唄」/唯一のからゆきさん遺跡「天如塔」/実像と変化/〝娼婦は必要〟/記憶を語り継ぐ
/からゆきさんの歌/春代の墓

第2章 「パンパン」と呼ばれて

「街頭に立った女性たち/「性の防波堤/オフリミッツ公娼制度廃止/「キャッチ」/局部検診という性暴力/キャッチの目撃者/パンパンになるきっかけ/「やけくそで」に込められたもの/「会話しただけで」「処女なのに」/家出・孤独/なぜ街娼となったか/街娼と戦後/基地の街・朝霞/「白百合会」/「オンリー」/「日本の上海」と呼ばれた街で/基地の子が見た「お姉さん」/売春防止法から反基地運動まで/口をつぐむ人々/元娼婦との再会/伝説の娼婦、メリーさん/メリーさんのライバル/「仕方ないでしょ、生きるために」/家族を養うため/「もう一度生きてみようと」

第3章 娼婦はどう見られてきたか

「容姿で選ばれる「商品」へ/遊女への蔑視/遊廓/日本の性的慰安施設/公娼制度廃止と売春防止法施行/女性たちへのまなざし

吉原脱出

現在の吉原/吉原を脱出/遊女の取り分と罰金/性病検診/遊女たちの友情/その後の光子と吉原

第4章 分断を越えるために

「風俗業をやっている人間はいなくていい」/立川デリヘル殺人事件/判決/歌舞伎町を夜回りする/居場所のない少女たち/性風俗がセーフティーネットという現実/「困難女性支援法」の成立/現代のからゆきさん/分断を乗り越えるために

おわりに
主な参考文献・資料一覧

 

◇牧野宏美(まきの・ひろみ)
毎日新聞記者。2001年に毎日新聞に入社し、広島支局、社会部などを経て現在はデジタル編集本部デジタル報道部長。初任地の広島支局時代から、原爆被爆者の方たちから証言を聞き取って伝えるなど太平洋戦争に関する取材を続けるほか、社会部では警察や国税当局を担当し、事件や裁判の取材にも携わった。2019年から統合デジタル取材センター(現・デジタル編集本部)で「毎日新聞デジタル」向けの記事を手がけるようになり、就職氷河期世代のルポタージュやSNSによる中傷被害について考える連載に関わった。2022年からはジェンダー格差や、生きづらさを抱えた女性に焦点を当てたウェブコラムを執筆した。毎日新聞取材班としての共著に「SNS暴力ーなぜ人は匿名の刃をふるうのか」(2020年、毎日新聞出版)。
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