aaa 未来への遺言 | 晶文社

未来への遺言

――いま戦争を語らなきゃいけない

著:前田浩智 砂間裕之 語り:保阪正康
四六判上製 288頁
定価:1,980円(本体1,800円)
978-4-7949-7430-3 C0021〔2024年7月〕


アマゾンで購入する
楽天ブックスで購入する
セブンネットで購入する

 

戦後80年を控え、
戦争が同時代史から歴史へとなる前に――

昭和史研究の第一人者でノンフィクション作家の保阪正康氏が語る、次世代へのメッセージとは?

ロシアによるウクライナ侵攻や、パレスチナ自治区ガザ地区でのハマスとイスラエルの戦闘など世界で戦火は絶えない。壮絶な敗戦を経験した日本は、その反省から平和国家の道を歩んだ。まがりなりにも80年近く平和が続いているが、私を含め日本のどれほどの人々が、ウクライナやガザの地獄を自分自身に重ねることができるだろうか。そして戦争する日本を想像できるだろうか。本書は、日本が再び戦争をしないため多角的に戦争とはなにかを理解してもらえる構成にしている。戦争を知らない世代の道しるべとなり、世界に誇れる平和国家実現の一助となると確信している。(はじめにより)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【目次】

はじめに 5

 

第1章 平和国家の変容と日本の現在地

忍び寄る戦争の影/戦後日本の共通基盤/再軍備を阻む構造/55年体制の崩壊/選挙制度と政治の構造変化/「安倍カラー」に染まった自民党 /反撃能力に関する岸田政権の対応 /戦闘機の輸出解禁/権威主義国家の台頭 /世界秩序の不安定化 /浮き彫りになった国際社会の分断線 /不寛容の先にあるもの/主な参考文献

 

第2章 太平洋戦争への道程と非戦のための記憶の継承

ロングインタビュー 保阪正康×前田浩智

1 愚かな選択

暴力を恐れた明治政府/あり得た5つの国家像/軍事主体となった背景/「主権線」と「利益線」/政府と議会の関係が変わった/戦争がビジネスに/第一次世界大戦でも/軍人の役割

2 戦争と皇室

明治政府による天皇の神格化/戦争回避を願う天皇/個人と天皇の一体化/天皇の戦争責任

3 「次の戦争」の現在地

現在の自民党は「保守」? /「護憲」だった後藤田正晴

4 二度と戦争をしないために

「戦間期の思想」/古典『戦争論』の見直しを/80年間の非戦を財産にする使命/民主主義の「影絵」/石橋湛山に学ぶ/吉田茂の「保守本流」とは/昭和史における「松明」

5 記録と教訓の継承

資料を残さない日本/戦争の総括ができていない/非戦の思想を縦と横に/教育とメディアが両輪に

6 平成天皇との対話

民主主義の定着/「満州事変」への強い関心 /「生前退位」のシグナル

 

第3章 復刻 57人の戦争証言

2・26事件

人生を狂わせたエリート軍人の悲劇/初年兵が語ったクーデターの裏側/事件に遭遇した少年たちの回想 /昭和天皇の怒りとある牧師の日記 /資金を届けた17歳の密使

日中戦争

戦争の残酷さをつづった自分史/中国での加害を告白した被爆者/混乱する戦地 兵士たちの怒りと不覚 /傷痍軍人の叔父に捧げた歌

戦時下の教育

国策すりこむ学校

真珠湾攻撃

空母「飛龍」整備兵の不安と疑問/開戦で一変したブラジル移民の生活/九軍神にまつわる証言/地獄のコタバル上陸作戦と戦艦大和

本土初空襲

ドーリットル隊爆撃機を見た少女/パンフレットが結んだ奇跡/ドーリットル空襲の犠牲者

総力戦と資源

女子勤労奉仕で見えた日本の現実 /狙われた輸送船 父の漂流日記/隠されたミッドウェーの大敗 /金属供出で廃業した父の印刷所

ほころび

ガダルカナルに消えた熟練飛行士/密林に突っ込んだ山本五十六長官機/大本営「玉砕」発表の違和感 /兄の戦死通知を見て泣き崩れた母

インドの志士

チャンドラ・ボースと日本

絶対国防圏

絵に描いた餅 絶対国防圏の幻想 /補給絶たれたラバウルの日本軍

背水

ある出陣学徒の本音/テニアンのガマで見た地獄 /今も歌えない「ゆりかごの唄」

空襲

東京大空襲前夜の小豆ご飯/国民学校地下で死んだ母と弟妹/相次いだB29墜落/終戦告げた「竜の昇天」

本土決戦

少年兵が見た極限の戦地/家族に守られた4歳の沖縄戦/負い目で志願した人間機雷「伏龍」

敗戦

原爆に奪われた母と2人の弟/生還した特攻隊員の苦悩/戦闘機製造も疎開/800発の艦砲射撃に耐え、玉音放送 /終戦後満州で処刑された父

主な参考文献

年表

おわりに

 

◇前田浩智(まえだ・ひろとも)
毎日新聞社主筆。1960年北海道生まれ。93年に毎日新聞社の政治部記者となり、当時の森喜朗自民党幹事長を担当。首相官邸、自民党、公明党、厚生労働省、外務省などを受け持ち、細川護熙政権以降の中央政界を取材した。小泉純一郎政権では首相官邸キャップ。政治部長、編集編成局次長、論説委員長を歴任し、2021年から主筆。日本記者クラブ理事長も務める。
◇砂間裕之(すなま・ひろゆき)
1985年、毎日新聞社入社。大津支局、奈良支局、大阪本社社会部などで、主に医療をテーマにした調査報道や文化財報道などに携わった。その後、大阪、東京両本社の人事部長や大阪本社社会部長、大阪、東京の編集局長を歴任。その間、戦後60年報道や戦後70年報道に取り組んだ。執行役員編集編成担当を経て、現在は取締役常務執行役員。埼玉県出身。
◇保阪正康(ほさか・まさやす)
昭和史の実証的研究を志し、延べ4000人もの関係者を取材してその肉声を記録してきたノンフィクション作家。1939年、札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。個人誌『昭和史講座』を中心とする一連の研究で第52回菊池寛賞を受賞。『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房)で第30回和辻哲郎文化賞を受賞。『昭和史 七つの謎』(講談社文庫)、『あの戦争は何だったのか』(新潮新書)、『東條英機と天皇の時代(上下)』(文春文庫)、『昭和陸軍の研究(上下)』(朝日選書) 、『近代日本の地下水脈』(文春新書)、『松本清張の昭和史』(中央公論新社)ほか著書多数。
関連書籍